会社設立の手続きは、いまやパソコンで簡単にできる時代になりました。
中でも「電子定款(でんしていかん)」は、会社設立の新常識として注目されています。

この記事では、電子定款の基本からメリット、実際の流れまで、行政書士の視点でわかりやすく解説します。

1. 電子定款とは?紙の定款とどう違うの?

そもそも「定款」ってどんな書類?

定款とは、会社の組織や活動に関する「基本ルール」をまとめた最も重要な書類です。
会社名(商号)、所在地、事業目的、資本金、役員構成などを定めた、いわば会社の“憲法”のような存在です。

会社法の規定により、会社を設立する際には必ず、この定款を作成する必要があります。また、株式会社の場合は、公証役場で作成した定款の認証を受ける必要があります。これは定款の内容について明確性を確保し、後日の紛争を防止するという意味があります。

会社の定款には以下の3つ種類の記載事項があります。

  • 絶対的記載事項
    定款が効力を有するには、必ず記載しなければならない事項です。これが記載されていない定款は有効な定款とは認められません。
     例)商号、目的、本店所在地
  • 相対的記載事項
    会社法の規定により、定款の定めがなければその効力を生じない事項です。定款に記載がなくても問題はありませんが、記載がなければその事項については効力が生じません。
     例)株式の譲渡制限に関する定め(株式会社)、持分の譲渡に関する定め(合同会社)
  • 任意的記載事項
    その他の事項で、会社法の規定に違反しない範囲で自由に記載できる事項です。定款に記載せずに、社内規定で定めることもできます。
     例)事業年度、株主総会に関する定め(株式会社)、社員総会に関する定め(合同会社)

紙の定款と電子定款の手続きの違い

会社を設立する際に定款を作成しなければなりませんが、会社法では定款を「電磁的記録をもって作成することができる」と定められています。この電磁的記録(つまり電子データ)で作成したものが「電子定款」になります。

株式会社の場合、従来は紙に印刷した定款に押印して、認証を受けるため公証役場に持参していました。
一方、電子定款はデータ(PDF形式など)に電子署名を施し、オンラインで認証を受ける方式です。
紙の定款と電子定款とでは、印紙代の負担の有無、手続きに要する時間と手間に大きな差が生まれます。

2. 電子定款の最大のメリット:印紙代4万円が不要に!

なぜ印紙代がかからなくなるのか?

紙の定款には「収入印紙(4万円)」を貼る必要があります。これは印紙税法で紙の定款が課税文書に該当するからです。一方で、電子定款の場合は、紙の文書が存在しないため、印紙税の課税対象外になります。

つまり、電子定款を選ぶだけで4万円の節約になります。これは起業初期の大きなコスト削減になります。

どんな場合でも電子定款にできるの?

株式会社・合同会社どちらの設立でも、紙の定款ではなく電子定款として作成することができます。
ただし、電子署名を行うためにICカードリーダーなどの機器や電子証明書などの環境を整える必要があり、初心者が自力で行うのはやや難しい面もあります。

3. 電子定款を作るには何が必要?準備する機器とソフト

電子証明書(マイナンバーカードなど)が必要

電子定款を作成するには、作成者本人の「電子証明書」が必要です。

もっとも一般的なのは、公的個人認証サービス(JPKI)を利用して、マイナンバーカードに内蔵された電子証明書を使う方法です。ただし、マイナンバーカードの電子証明書は有効期限があり、更新を怠っていると有効期限が切れている場合がありますので、注意が必要です。

パソコン・カードリーダー・電子署名ソフトの基本セット

電子定款を作成するには、以下の環境が必要です(マイナンバーカードの電子証明書を使用する場合):

  • パソコン(Windows推奨)
    電子定款を作成したりオンライン申請するために必要です。
  • マイナンバーカード
    電子定款に電子署名を行う際に、公的個人認証サービスを利用する場合は、マイナンバーカードに内蔵された電子署名用証明書が必要になります。
  • ICカードリーダー
    マイナンバーカードに内蔵された電子証明書を読み込むために使用します。
  • PDFファイル作成ソフト(Adobe Acrobat)
    電子定款の元文書はWordなどの文書作成ソフトで作成しますが、作成した文書に電子署名を行うために、PDF文書に変換する必要があります。
  • PDF署名プラグインソフト
    作成したPDF文書に電子署名を行うために使用します。

これらを組み合わせて、定款のPDFデータを作成して電子署名を行い、オンラインで申請します。

自分でやる場合と行政書士に依頼する場合の違い

自分で行う場合、定款作成及び認証の手続の知識だけでなく、環境設定や電子署名の知識が必要になります。
一方、行政書士に依頼すれば、こうした機器や設定を準備する必要はなく、確実かつスピーディに処理してもらえます。

公証役場とはオンライン(ウェブ会議)による認証が可能となっており、全国どこの会社設立でも手続きが可能となっています。
ただし、本人確認や委任状の提出など、法的に定められた手順を正確に踏む必要があります。

4. 電子定款を使った会社設立の流れ

定款作成から認証、登記までの手順

電子定款を利用した会社設立は、以下のステップで進みます:

  1. 定款の内容を決定する
    最近ではオンラインで無料で会社設立が出来るサービスもあり、その気になれば簡単に定款を作成することが出来ますが、「そもそも「定款」ってどんな書類?」のところでもご説明した通り、定款は会社の憲法のような重要な文書です。
    会社の「商号」を例にすると、会社の名称はホームページや名刺等様々なところで使用するものです。一度定着したものを変更するとそれを再度顧客に認知していただく必要がありますし、定款変更と変更登記が必要になり手間と費用が掛かりますので、最初にしっかりと考えておくことをお勧めします。
    また「目的」は会社の事業目的を記載しますが、将来行う予定の事業内容を記載することも可能ですし、許認可が必要な事業は記載しておく必要があります。
  2. 電子署名を付与する
    作成した定款の文書ファイルをPDFファイル作成ソフト(Adobe Acrobat)でPDF文書に変換して、電子署名を行います。電子署名を行う前に署名プラグインソフトをインストールしておく必要があります。
    なお、定款の内容に不備があると、設立登記ができなくなる可能性がありますので、定款の内容等について、公証人の事前審査を受けておくことが肝要になります。
  3. 公証役場へインターネットで認証申請
    電子定款を公証役場に認証してもらうためには、「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。登記・供託オンライン申請システムに事前にユーザー登録をして「申請用総合ソフト」をダウンロードしておく必要があります。
    電子署名をした定款は字句の訂正・変更はできません。インターネット経由で公証役場へ送った電子署名済みの定款に字句の訂正・変更の必要が生じた場合には、元文書を訂正・変更した上で、再度電子署名を行いインターネットで送らなければならず、手間と時間を要しますので、注意が必要です。
  4. 認証済データを受領
    CD-RやUSBメモリなどの電子記憶媒体を持参して公証役場に出向き、認証済みの電子定款を受領します。ウェブ会議を利用する電子認証の場合は、認証済みの電子定款のデータをメールで受領することもできます。
    認証証明書等は返信用のレターパックで送付されます。
  5. 登記書類を法務局へ提出
    本店の所在地において設立の登記をすることで会社が成立します。登記申請は司法書士の業務になりますので、専門家に依頼する場合は司法書士に依頼することになります。

定款作成から認証、登記までの手順は以上になりますが、定款作成から認証までは勿論、司法書士への依頼まで行政書士が一括してサポートできるため、手続きのミスによる再申請の手間や費用、会社設立の遅れを防ぐことができます。

電子定款にすると設立までの期間も短縮できる?

紙の定款では郵送や持参が必要ですが、電子定款なら基本インターネットで完結できます。
その分、公証役場とのやり取りもスピーディになり、設立までの日数を短縮できます。

5. デジタル時代の会社設立:オンライン化のこれから

電子定款だけじゃない、オンライン申請の広がり

会社設立の手続きは、今後さらにオンライン化が進みます。
登記、税務署・年金事務所への届出も、マイナポータルなどを通じて一括申請できるようになってきています。(法人設立ワンストップサービス

行政書士が支援する“デジタル起業時代”の新しい形

電子定款は単なるコスト削減手段ではなく、「デジタル起業の第一歩」です。
行政書士は、電子認証の実務からその後の届出、補助金申請、電子契約など、幅広くサポートできます。
オンラインで効率的に手続きを進めたい方は、ぜひ早めの相談をおすすめします。

まとめ

  • 電子定款は「印紙代4万円が不要」になる大きなメリットがある
  • 行政書士に依頼すれば、電子定款の作成・認証のための機器の準備や複雑な設定は不要
  • オンラインでの会社設立は、デジタル起業時代の新しい標準

デジタル化が進む今、電子定款をうまく活用することで、スムーズでスマートな起業が可能です。

電子定款や会社設立について疑問点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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結城行政書士事務所