はじめに:なぜ今「外国人雇用」を考える企業が増えているのか?

日本では、中小企業を中心に人材不足が深刻化しています。特に建設業・製造業・介護・飲食といった分野では、求人を出しても応募が来ない状況が続いており、それを解決するために外国人材の活用が現実的な選択肢として広がってきました。

一方で、外国人を雇用する際には「どの業務をどの在留資格で行えるのか」を理解することが不可欠です。誤った在留資格で雇用してしまうと、企業側も罰則を受けるリスクがあります。
本記事では、中小企業の経営者が最低限知っておきたい「就労ビザ(在留資格)」の基本をわかりやすく解説します。

1. 外国人を雇うとき最初に理解すべき「在留資格」とは?

日本で働く外国人は「在留資格」によって、できる仕事・できない仕事が明確に決められています。

一般的に“就労ビザ”と呼ばれるものは法律上の正式名称ではなく「就労が認められた在留資格」の総称です。
在留資格の種類ごとに、認められる業務の範囲は大きく異なります。たとえば、ホワイトカラー業務が中心の「技術・人文知識・国際業務」では、荷物の運搬や店舗スタッフなどの単純作業は原則できません

在留資格の内容を無視して働かせると「資格外活動」に該当し、場合によっては企業にも罰則が科される可能性があります。採用前に必ず在留カードを確認し、在留資格の内容を理解しておくことが重要です。

2. 就労可能な在留資格は大きく4タイプある

(1)高度専門職系(専門性の高いホワイトカラー)

「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」をはじめ、外国企業からの転勤者が対象の「企業内転勤」、高い能力を持つ専門職向けの「高度専門職」などが該当します。
システムエンジニア、経理、営業、通訳などの事務系業務が対象となる一方、単純作業は原則認められていません

(2)特定技能(ブルーカラー業務で最も注目される資格)

2019年から導入された比較的新しい在留資格で、特定技能1号は、人手不足が深刻な建設業、製造業、外食業など16分野で働くことができます。特定技能2号は、より熟練した技能を持つ人材が対象で、各分野で定められた高度な技能基準に合格する必要があります。
これまで多かった「技能実習」は実習・技能移転目的であり労働が主目的ではないのに対し、特定技能は“労働力確保が目的”の在留資格です。外国人材の雇用手段として今最も注目されている制度です。

(3)技能(熟練技能のプロフェッショナル)

特定技能と名称が似ていますが、こちらは従来からある在留資格で、外国料理の料理人スポーツ指導者など、一定の実務経験や実績を持つ人が該当します。
建設業でも外国に特有の建築及び土木に係る技能について熟練技能を持つ外国人が対象となりますが、要件が比較的厳しい点に注意が必要です。

(4)身分系の資格(日本人と同等の就労が可能)

永住者日本人の配偶者定住者などが該当し、職種に制限なく働けるのが特徴です。
採用側としては非常に柔軟ですが、離職後の在留資格更新など、生活基盤(収入・生活能力)への配慮も必要になる場合があります。

3. 建設業の企業が特に押さえるべき就労資格はこの3つ

建設業では、現場作業に就ける外国人材が限られているため、特に以下の3つを理解しておくことが重要です。

① 特定技能1号(建設)

建設現場で就労でき、不足している作業に対応できる制度です。技能実習からの移行者も多く、即戦力として期待できます。

② 技能実習(建設)※就労資格ではない点に注意

あくまで「技能移転」が目的の制度であり、本来は労働力確保のための制度ではありません。認められた作業以外をさせると不正となり、企業側の責任が問われます

③ 特定技能2号(建設)

熟練した建設技能を持つ外国人向けで、在留期間・家族帯同などの条件が緩和されるため、長期雇用に向いています。
しかし現状、対象者のハードルが高く数は非常に限られています

4. 「この業務はどの在留資格でできる?」すぐわかる業種別チェックリスト

実施する業務内容と、それが可能な在留資格の対応関係について、以下の一覧にまとめました。
あくまでも良くあるケースを簡潔にまとめた表ですので、実際には個別の事例に応じて対応する在留資格を十分に検討する必要があります

【業務 × 在留資格 対応一覧表(例)】

「単純作業=不可能」と一括りにされがちですが、特定技能制度の登場により状況は変わっています。
業務内容によって適切な在留資格が大きく異なるため、採用前に業務内容を明確にしておくことが重要です。

5. 外国人を雇う企業が気をつけるべき5つの注意点

① 在留資格の範囲外の作業をさせないこと

許可されていない業務を頼むと「資格外活動」に該当します。
資格外活動を行うと、不法就労として当該外国人本人が刑事罰に処せられたり、在留資格の取消し処分を受けるだけでなく、雇用主「不法就労助長罪」として刑事罰に処せられる可能性があります。

② 労働条件通知書・契約書を必ず整備すること

母国語のサポートやわかりやすい説明を行い、雇用トラブルを防ぎます。
また、雇用契約書労働条件通知書などは雇用しようとしてる外国人の方の在留資格変更許可申請の際に、企業に雇用されることを証明する書類として提出が必要になります。

③ 在留カードの確認は初日の出勤前に必須

偽造カードの事例もあり、表面だけでなく在留期限・資格内容を確実に確認します。
雇用契約締結時には有効な在留資格を所持していたとしても、就労開始時に有効な在留資格を所持しているとは限りません。不法就労助長罪は、企業が締結した雇用契約そのものが問題になるのではなく、“資格外活動として働かせたかどうか” が罰則の対象になります。

④ 在留期限の管理を徹底する

更新忘れにより在留期限が切れてしまうと、本人だけでなく企業にも影響します。在留カードとパスポートの有効期限を定期的に確認することをおすすめします。
また、在留資格の更新は期限が切れる前(3か月前程度)に早めに行うことをおすすめします。

⑤ 生活サポートも重要(特に特定技能・技能実習)

住まい、交通、生活ルールなどのフォローが離職率・安定就労に直結します。
特定技能(1号)の場合は、受入れ機関(雇用主)が、外国人への支援を適切に実施することが法律で義務付けられています。
具体的には、事前ガイダンス、出入国する際の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援など10項目について支援計画を作成し、計画に基づき支援を行うこととされています。

6. 採用から入社までの流れをわかりやすく図解

これまでの説明も踏まえて、採用から入社までの大きな流れを図解すると以下のようになります。

建設業の場合、技能実習→特定技能1号→特定技能2号というステップアップもあります。

7. よくある質問(Q&A)

Q1. アルバイトとして外国人を雇っても大丈夫?

⇒ 在留資格によります。留学生(留学)や家族滞在は「資格外活動許可」を受ければ、週28時間以内の制限付きでアルバイト(風俗営業を除く)をすることが可能です。

Q2. 在留期限が近い外国人を採用してもいい?

⇒可能です。ただし更新の可否を見極める必要があるため、早めの確認が重要です。

Q3. 中小企業と大企業で就労ビザに関する手続きは異なる?

⇒基本的な就労ビザ(在留資格変更・更新許可、在留資格認定証明書交付など)の申請手続は変わりません。ただし、企業規模等によりカテゴリー分けされており、カテゴリーに応じて提出書類が多くなる場合があります。

Q4. 離職した場合どうすればいい?

⇒特定技能の場合は、受入れ機関(雇用主)が地方出入国在留管理局へ届出が必要になります。
 また、特定技能に限らず離職や転職した場合、外国人本人が行うべき届出もあります。

まとめ:外国人雇用は「ルールを理解すれば」大きな力になる

建設業をはじめ製造業、介護、飲食業など多くの中小企業で人手不足が続く中、外国人材の活用は有力な選択肢となっており、特に特定技能制度は企業の抱える課題を解決する大きな選択肢となり得ます。
在留資格は複雑に見えますが、基本を押さえればリスクを避けつつ、外国人材を企業の戦力として迎えることができます。

重要なのは「適切な在留資格の確認」「外国人材が働きやすい環境整備」です。特に在留資格は、不法就労となってしまうリスクを避けるために慎重な確認が必要です。

当事務所でサポートできること

当事務所では以下のサポートを行っています。

  • 在留資格の種類の確認
  • 就労ビザ(在留資格変更・更新許可など)の申請取次ぎ
  • 特定技能制度の活用サポート

外国人雇用は正しい知識があれば企業にとって大きな力になります。
「このケースはどうなの?」といった具体的なご相談にも対応可能です。お気軽にお問い合わせください。

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結城行政書士事務所