建設業許可を取得して、「これで手続きはひと安心」と思っていませんか?
建設業許可は、一度取得すれば何もしなくてよいわけではありません。
許可取得後も、毎年の決算後に行う「決算変更届(決算報告)」、会社や営業所、役員などに変更があった場合の「変更届」、そして5年ごとの「更新申請」など、許可を維持するための手続きが必要になります。
こうした手続きを忘れていると、建設業許可の更新や業種追加、さらには公共工事への参入に必要となる経営事項審査にも影響する可能性があります。
この記事では、東京都知事許可を受けている建設業者を主な対象として、建設業許可を取得した後に必要となる「決算変更届」と「変更届」を中心に、許可を適切に維持するための手続きを分かりやすく解説します。
1.建設業許可は「取得したら終わり」ではない
建設業許可を取得した後に必要となる手続きは、大きく次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
① 毎年必要になる「決算変更届」
建設業者は、毎事業年度が終了した後に、その年度の工事実績や財務内容などを許可行政庁へ報告する必要があります。
これが一般に「決算変更届」と呼ばれている手続きです。
東京都の手引では「決算報告」という名称も使われています。
② 会社などに変更があったときの「変更届」
建設業許可を取得したときに届け出た事項に変更が生じた場合には、変更届が必要になることがあります。
例えば、
- 会社名を変更した
- 本店を移転した
- 営業所を新設・廃止した
- 資本金を変更した
- 役員が変わった
- 常勤役員等が変わった
- 営業所技術者等が変わった
といったケースです。
③ 5年ごとの「更新申請」
建設業許可の有効期間は5年間です。
引き続き建設業許可が必要な工事を請け負う場合には、有効期間が満了する前に更新申請を行う必要があります。
つまり、建設業許可は、
「毎年の手続き」+「変更時の手続き」+「5年ごとの更新」
によって維持していくものと考えると分かりやすいでしょう。

2.毎年必要な「決算変更届」とは?
決算が終わるたびに必要な届出
決算変更届とは、建設業者が毎事業年度終了後に、その年度の工事実績や財務状況などを許可行政庁へ報告する手続きです。
東京都知事許可を受けている建設業者の場合は、東京都へ届け出ます。
通常の会社では税務署などへの税務申告を行いますが、それとは別に、建設業法に基づく届出が必要になるということです。
そのため、
「税理士に決算をお願いしているから、建設業関係の手続きも終わっている」
とは限らない点に注意しましょう。
提出期限は「事業年度終了後4か月以内」
決算変更届は、毎事業年度終了後4か月以内に提出する必要があります。
例えば、3月31日が決算日の会社であれば、原則として7月31日までに提出することになります。
個人事業主についても、事業年度終了後4か月以内の届出が必要です。
東京都も、建設業許可業者に対して毎年度の決算報告を求めています。
決算変更届では何を提出する?
東京都知事許可の場合、代表的な提出書類には次のようなものがあります。
- 変更届出書(決算報告用)
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 財務諸表
- 事業報告書(株式会社の場合)
- 納税証明書
などです。
法人・個人の違いや申請者の状況によって必要書類が異なるため、実際に届け出る際には東京都の最新の手引を確認する必要があります。
3.決算変更届を出さないとどうなる?
「許可の更新は5年に1回なのだから、そのときにまとめて出せばよいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、決算変更届は毎事業年度終了後4か月以内に提出することが義務付けられている届出です。
更新申請や業種追加などに影響する
東京都の手引では、必要な届出が提出されていない状態では、業種追加申請や更新申請などを受け付けることができないとされています。
例えば、5年間まったく決算変更届を提出していなかった場合、更新時になって過去の決算資料や工事実績をさかのぼって整理しなければならなくなる可能性があります。
時間が経つほど、
「この工事は何工事として記載するのか」
「当時の資料がどこにあるのか」
といった確認にも手間がかかります。また、過去の決算期の納税証明書が取得できない場合もあります。
毎年の決算が終わったら、その都度提出する習慣をつけておくことが大切です。
経営事項審査を受ける会社は特に重要
公共工事への入札参加を予定している建設業者は、さらに注意が必要です。
経営事項審査では決算内容や工事実績などを使用するため、おおむね、
決算終了
↓
決算変更届
↓
経営状況分析
↓
経営事項審査
という流れで手続きを進めます。
公共工事への参入を継続する会社では、決算変更届は経営事項審査へつながる毎年の重要な手続きと考えておきましょう。
4.会社に変更があったときに必要な「変更届」とは?
決算変更届とは別に、建設業許可申請時に届け出た内容に変更が生じた場合にも、変更届が必要になることがあります。
例えば、
- 商号・名称を変更した
- 営業所の名称や所在地を変更した
- 営業所を新設・廃止した
- 営業所で扱う建設業の業種を変更した
- 資本金額を変更した
- 役員や代表者を変更した
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人を変更した
- 常勤役員等を変更した
- 営業所技術者等を変更した
といったケースです。
ここで重要なのが、変更内容によって提出期限が違うことです。
「変更届だから全部30日以内」と覚えてしまうと間違える可能性があります。
5.どんな変更を、いつまでに届け出る?
東京都知事許可の場合、主な変更事項と届出期限は次のように整理できます。
| 主な届出事項 | 届出期限 |
|---|---|
| 決算報告(決算変更届) | 事業年度終了後4か月以内 |
| 商号・名称の変更 | 変更後30日以内 |
| 営業所の名称・所在地等の変更 | 変更後30日以内 |
| 営業所の新設・廃止等 | 原則として変更後30日以内※ |
| 資本金額の変更 | 変更後30日以内 |
| 役員等・代表者の変更 | 変更後30日以内 |
| 建設業法施行令第3条に規定する使用人の変更 | 変更後2週間以内 |
| 常勤役員等の変更 | 変更後2週間以内 |
| 営業所技術者等の変更 | 変更後2週間以内 |
| 健康保険等の加入状況の変更 | 変更後2週間以内 |
※営業所の新設・廃止、業種追加・廃止などに伴って営業所技術者等の変更が生じる場合は、2週間以内の届出が必要となる場合があります。
このように、「30日以内」「2週間以内」「事業年度終了後4か月以内」という複数の期限があります。
変更が発生したら、「次の決算変更届のときにまとめて届ければよい」と判断せず、その変更についていつまでに届出が必要なのかを確認しましょう。
6.特に注意したい「人」に関する変更
変更届の中でも特に注意したいのが、建設業許可の要件そのものに関係する人の変更です。
代表的なのが、
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)
- 営業所技術者等
です。
「辞めてから後任を探す」では間に合わないことも
例えば、営業所技術者等として届け出ている社員が退職することになったとします。
「退職したら東京都へ変更届を出せばよい」
というだけではありません。
その人がいなくなった後も、営業所について必要な要件を満たす営業所技術者等を置くことができるかを確認する必要があります。
常勤役員等についても同様です。
後任者が必要な経験などの要件を満たしていなければ、建設業許可を維持できなくなる可能性があります。
したがって、人員に関する変更では、
①退職・異動
↓
②後任者を検討
ではなく、
①退職・異動の予定
↓
②許可要件を確認
↓
③後任者を確保
↓
④変更
↓
⑤期限内に変更届
という順番で考えることが重要です。
会社の人事異動や退職予定が分かった段階で、建設業許可への影響を確認しておくと安心です。
7.5年ごとの建設業許可更新も忘れずに
建設業許可の有効期間は、許可を受けた日から5年間です。
引き続き建設業許可を維持するためには、有効期間が満了する前に更新申請を行う必要があります。
ここで重要になるのが、これまで説明してきた決算変更届や変更届です。
毎年の決算変更届を提出していなかったり、役員などの変更届を出していなかったりすると、更新時に未提出の届出への対応が必要になります。
更新直前になって慌てないためにも、
毎年:決算変更届
+
変更時:変更届
+
5年ごと:更新申請
というサイクルで許可を管理していくことが大切です。

8.決算変更届・変更届についてよくある質問
Q1.その年度に売上や工事実績がなくても、決算変更届は必要ですか?
はい。
建設業許可を受けている場合は、工事実績がない年度でも決算変更届(決算報告)が必要です。
東京都の手引でも、工事実績がない場合は、工事経歴書に「実績なし」と記載して提出することとされています。
決算変更届は、毎事業年度終了後4か月以内に提出しましょう。
Q2.数年間、決算変更届を提出していません。どうすればよいですか?
未提出だからといって、そのままにしておくことはおすすめできません。
更新申請などにも影響するため、過去の決算書や工事関係資料を確認し、未提出年度について順次対応する必要があります。
複数年度にわたっている場合は、早めに東京都や行政書士へ相談するとよいでしょう。
Q3.税務署へ確定申告をしていれば、決算変更届は不要ですか?
いいえ。
税務申告と建設業法に基づく決算変更届は別の手続きです。
法人税や所得税などの申告を済ませていても、建設業許可業者としての決算変更届は別途必要です。
Q4.代表取締役が変わった場合は届出が必要ですか?
必要です。
東京都知事許可の場合、役員等・代表者の変更は原則として変更後30日以内の届出事項です。
ただし、新しい代表者が常勤役員等を兼ねるなど、許可要件に関係する変更を伴う場合には、別の届出や確認が必要になることがあります。
Q5.本店を移転した場合、法務局で登記を変更すれば終わりですか?
いいえ。
建設業許可上の営業所所在地などが変更になる場合には、建設業法上の変更届も必要になります。
登記変更だけで建設業許可の情報が自動的に変更されるわけではありません。
Q6.営業所技術者等が退職する予定です。どうすればよいですか?
退職後ではなく、退職前に後任者が許可要件を満たしているか確認することが重要です。
営業所技術者等は建設業許可の重要な要件に関係するため、後任者を確保できない場合には許可の維持に影響する可能性があります。
Q7.決算変更届と建設業許可の更新は同じ手続きですか?
別の手続きです。
決算変更届は毎事業年度終了後に提出するもので、建設業許可の更新は5年ごとに行います。
「5年に一度の更新時に決算関係もまとめて対応する」のではなく、毎年の決算変更届をきちんと提出しておくことが大切です。
9.行政書士に依頼するメリット
建設業許可取得後の手続きは、一つひとつを見ればそれほど難しく感じないかもしれません。
しかし、実際には、
- 毎年の決算変更届
- 商号・所在地・役員等の変更管理
- 常勤役員等や営業所技術者等の要件確認
- 5年ごとの許可更新
- 業種追加
- 経営事項審査
などを継続して管理する必要があります。
特に注意したいのは、届出期限だけでなく「変更後も許可要件を満たしているか」を確認しなければならないケースがあることです。
行政書士に継続して相談することで、届出書類の作成だけでなく、
「この人事異動をしても許可を維持できるか」
「この営業所を移転すると何の届出が必要になるか」
「次回の更新までに何をしておけばよいか」
といった点も含めて確認しやすくなります。
また、公共工事への参入を考えている会社では、決算変更届から経営事項審査、さらに入札参加資格申請までを見据えた手続き管理を行うことも重要です。
まとめ|建設業許可は取得後の管理も大切です
建設業許可は、「許可証を取得したら終わり」ではありません。
許可を適切に維持するためには、
毎年 → 決算変更届(決算報告)
変更があったとき → 各種変更届
5年ごと → 更新申請
という継続的な管理が必要です。
特に、常勤役員等や営業所技術者等の変更は、単なる届出の問題ではなく、建設業許可の要件そのものに影響する可能性があります。
また、決算変更届を毎年きちんと提出しておくことは、5年ごとの許可更新だけでなく、経営事項審査を受けて公共工事へ参入する際にも重要です。
「何を届け出ればよいのか分からない」「決算変更届を数年間出していない」「役員や技術者が変わる予定だが許可への影響が心配」といった場合には、変更を行う前に行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
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